【第54回 気象予報士試験 一般知識】問7 ダウンバーストの風速計算をわかりやすく解説
こんにちは!今回は第54回 気象予報士試験 一般知識 問7を解説します!
この問題は、ダウンバーストの下降流が地表付近で水平に広がるときの水平風速を、空気の流量保存から求める問題です。
受験生がつまずきやすいのは、力学の難しい式を使おうとしてしまうところです。
実はこの問題は、入ってくる空気の量 = 出ていく空気の量で解けます。
この問題で重要なポイント
- 定常状態なので、入ってくる空気量と出ていく空気量は等しい。
- 下降流は半径500mの円柱内を20m/sで下向きに流れる。
- 地表付近では、中心から半径1000mの位置で水平方向に広がる。
- 水平に出ていく面は、円柱の側面のように考える。
- 出ていく面積は、円周 × 高さで求める。
- 密度は同じとされているので、体積流量だけを比較すればよい。
- 摩擦などは考えないので、単純な連続の式で解く。
■ 問題文
図はダウンバーストの模式図である。積乱雲からの下降流は円柱状に生じており、その下降流は、地上付近に達するとほぼ水平に、地表面から高度50mまでの範囲で高さ方向に一様な風速で、図のように軸対称に広がるものとする。
高さhにおける円柱の半径を500m、下降流の速さを円柱内で一様に20m/sとするとき、地表面近くで下降流の中心から1000m離れた地点Rにおける地表面から高さ50mまでの範囲の水平風速として最も適切なものを、次の①〜⑤の中から1つ選べ。
ただし、定常状態を仮定し、高さhおよび地点Rの空気の密度は同じで、地表面との摩擦およびここに述べた以外の風は考慮しないものとする。
| 選択肢 | 水平風速 |
|---|---|
| ① | 20m/s |
| ② | 40m/s |
| ③ | 50m/s |
| ④ | 60m/s |
| ⑤ | 80m/s |
■ 解答
③
水平風速:50m/s
■ 解き方の方針
この問題は、空気の量が途中で増えたり減ったりしないと考えます。
上から下降してくる空気量
=
地表付近で横に広がる空気量
密度は同じとされているので、質量ではなく体積流量だけを比べればOKです。
体積流量
=
面積 × 風速
これを下降流と水平流にそれぞれ当てはめます。
■ 補足講義:なぜ「入る量 = 出る量」でよいのか
問題文には、定常状態と書かれています。
定常状態とは、時間が経っても全体の状態が変わらないということです。
つまり、ある場所に空気がどんどんたまっていくわけではありません。
定常状態
↓
空気がたまらない
↓
入った分だけ出ていく
↓
流量保存
この考え方を使えば、難しい運動方程式を使わずに計算できます。
■ Step1:下降してくる空気の量を求める
下降流は、半径500mの円柱状に生じています。
円の面積は、半径 × 半径 × π です。
下降流の断面積
=
π × 500 × 500
下降流の速さは20m/sなので、下降してくる体積流量は、
π × 500 × 500 × 20
となります。
■ Step2:水平に出ていく空気の量を考える
次に、地表付近で外側へ広がる空気を考えます。
地点Rは、下降流の中心から1000m離れています。
そのため、半径1000mの円周上を、空気が外向きに通過していくと考えます。
高さは地表面から50mまでです。
水平に出ていく面積
円周 × 高さ
=
2π × 1000 × 50
水平風速をvとすると、水平に出ていく体積流量は、
2π × 1000 × 50 × v
となります。
ここが最大のひっかけ
出ていく面積を「π×1000×1000」の円の面積で考えてはいけません。
空気は円盤全体を通るのではなく、半径1000mの円柱側面を横向きに通過すると考えます。
■ Step3:下降流量と水平流量を等しくする
定常状態なので、下降してくる空気量と水平に出ていく空気量は等しくなります。
π × 500 × 500 × 20
=
2π × 1000 × 50 × v
両辺のπは消せます。
500 × 500 × 20
=
2 × 1000 × 50 × v
左辺は、
500 × 500 × 20
=
5,000,000
右辺の係数は、
2 × 1000 × 50
=
100,000
したがって、
5,000,000
=
100,000v
v = 50m/s
よって、正解は③です。
■ 補足講義:なぜ50m/sと大きくなるのか
下降流の速さは20m/sなのに、地表付近の水平風速が50m/sになるのは不思議に感じるかもしれません。
これは、空気が外へ出ていく場所の断面が比較的狭いからです。
上から入る断面
=
大きな円の面積
横に出る断面
=
円周 × 高さ50m
出る面積が限られる
↓
同じ空気量を出すには
風速が大きくなる
つまり、流量を保つために、地表付近では強い水平風が必要になります。
■ 計算の確認表
| 項目 | 式 | 意味 |
|---|---|---|
| 下降流の断面積 | π × 500 × 500 | 半径500mの円の面積 |
| 下降流量 | π × 500 × 500 × 20 | 上から入ってくる空気量 |
| 水平流の通過面積 | 2π × 1000 × 50 | 半径1000mの円柱側面 |
| 水平流量 | 2π × 1000 × 50 × v | 外向きに出ていく空気量 |
| 流量保存 | π × 500 × 500 × 20 = 2π × 1000 × 50 × v | 入る量と出る量が等しい |
■ 選択肢確認表
| 選択肢 | 水平風速 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|---|
| ① | 20m/s | 誤 | 下降流の速さをそのまま水平風速としてしまっている。 |
| ② | 40m/s | 誤 | 水平に出ていく面積の取り方が正しくない場合に近い値。 |
| ③ | 50m/s | 正 | 流量保存より、水平風速は50m/sとなる。 |
| ④ | 60m/s | 誤 | 水平流の通過面積を小さく見積もりすぎている。 |
| ⑤ | 80m/s | 誤 | 流量保存の設定に合わない。 |
■ 受験生がつまずくポイント
1. ダウンバーストの知識問題だと思ってしまう
この問題は、ダウンバーストの現象名は出ていますが、実際には流量保存の計算問題です。現象の知識より、図から面積を正しく読むことが大切です。
2. 出ていく面積を円の面積で計算してしまう
地点Rで考えるのは、半径1000mの円全体の面積ではありません。空気が横向きに通過する円柱側面、つまり「円周×高さ」です。
3. 高さ50mを入れ忘れる
水平風は、地表面から高さ50mまでの範囲で一様とされています。この50mが、水平に出ていく面積を作る重要な値です。
4. 半径500mと1000mを混同する
500mは下降流の半径、1000mは地点Rまでの距離です。それぞれ使う場所が違います。
5. 密度を考えようとして迷う
問題文で、高さhおよび地点Rの空気の密度は同じとされています。したがって、密度は約分でき、体積流量だけを考えれば十分です。
6. 風速20m/sを答えにしてしまう
20m/sは下降流の速さです。求めるのは地表付近で外向きに広がる水平風速なので、同じ値とは限りません。
■ まとめ
- この問題は、流量保存で解く。
- 下降流量は、π×500×500×20。
- 水平流の通過面積は、2π×1000×50。
- 水平流量は、2π×1000×50×v。
- 両者を等しくすると、v=50m/s。
正解は③
この問題で必ず押さえたいこと
定常状態
↓
入る空気量 = 出る空気量
下降流量
=
π × 500 × 500 × 20
水平流量
=
2π × 1000 × 50 × v
v = 50m/s
※ 本記事では、一般財団法人 気象業務支援センターより利用許諾を受けて、気象予報士試験問題を掲載しています。
問題文の著作権は一般財団法人 気象業務支援センターに帰属します。
以上、第54回 一般知識 問7の解説でした!
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